
佐久間N「これは一月のある日、放課後の図書室での出来事。九重慧が体験した、不思議な不思議なお話。そうね、この体験が無かったら今頃彼はずっと彷徨い続けていたかもね」
【はあ…もう一月になるって言うのに、どうすんだろ、進路。このままじゃ人に流されて行きたくもない学校に入って…】
(回想)
生徒A(九重君はいいよね、頭いーからお父さんおっかけて法学部とかね)
【違う】
B(ほんと、優等生は)
先生(がんばれよ、先生も期待してるからな)
【違う、俺はそんなんじゃない…そんなんじゃないんだ…!!】
(回想終わり)
【俺は…どうしたいんだ?…この本は】//頁をめくる//
【モラトリアム…先輩の好きな本だ。そういや、最近先輩来なくなったな、ここ。学校にも来てないみたいだし】//携帯が鳴る// はい…って先輩、さぼりですか、明日は入試でしょう?
佐久間「あ、ココ…、ちょっとさ、助けてくれない?」
はい
「物語のままじゃいけないの、そのままでは失敗するわ」
え…何のことですか?って、えっ!?
//窓割れる音、異世界へ//
歌・数人でコーラス(アリスを救え 鳥籠のアリスを救い出せ ボートの猫となって 救い出せ でも知ってた?アリスは籠から出たくない チシャ猫は正しい道を示せない なぜってアリスは なにも信じていないから)
猫…?なんだそれ…!ってうわあああ—!!
A(白兎がまた溺れたって)B(へェ、そいつは面白いな)C(これで三匹目だろう?)全(あっはっはっ)
なんだ…?ここは…俺はどうして
案内人「やあ、君が次の猫役さんだね」
え、えっとここは…
「アリスの狂気が作った世界さ。簡単なルールを説明しよう。この池の奥に、大きな鳥籠がある、舟に乗ってそこへ行き、鳥籠のアリスを救い出すんだ。そう、アリスを導く者、チシャ猫となって。池やアリスを怒らせてはいけないよ、そうすれば一瞬で」
一瞬で?
//微笑み//「まっさかさま、さ」
彼らは何です?
「気にしないで、失敗して行き場をなくした輩の宴さ。さあ、ここからは生きて帰るも彼らの仲間になるのも、君の行動次第だ」
はあ
「がんばれー」
舟か//水音//
【どうして先輩はあんなこと、どうして俺はここに…】
(回想)
佐久間「池に浮かんだ鳥籠 ゆらゆら揺れる、その中に 白いドレスの少女が一人
池に映し出されたいくつもの未来 どれもが幸せそうに見えるけれど
少女は未だ、その中のどれも望んではいない」
(おわり)
【そういえばこの話、何処かで…そうだ、これは…モラトリアム…猶予期間って意味だったっけ。大人と子どもの境目の期間だとかなんだとか。それからずっと大人になれない人もいるとかなんだとか。…今の俺と一緒だな】//舟を漕ぐ、水音//
池「新たな猫か、私に一言も了解を得ずに入ってくるとは、たいした身分の猫だ」
えっと!すみません!俺は全く怪しい者ではなく…
「ボートに乗る猫の何処が怪しくないだと?」
【これ…本と内容少し違わないか…?】
「話を聞いているのか!猫!こら、チシャ猫め!」//何かが切れる音//
猫猫猫猫って…!そう呼ぶのがそんなに楽しいか!人を勝手に決めつけて!俺は、俺は…九重慧だ!
(回想)案内人「池やアリスを怒らせてはいけないよ」(おわり)
【しまった!】
「ほう、そうか、おぬし…」
【…やばい!】
「慧、というのか、そうだ、おぬしは猫ではない、その通りだ。よくやった、おぬしは他人の意思に流されず、自分の意志を貫いた」
え…それは
「これは試練だよ、慧。さあ、おぬしをアリスの元へ」
【何とかなった…というか、これで、よかったんだ…】